瑛子は、十六歳まで或る孤児施設で暮らし、高校入学と共に現在同じ支店の支店長久我浩一の家に引き取られ高校まで卒業、その後、久我の推薦も有り三英銀行に就職、独り暮らしを始めるが、それは、別の事情も含まれていた。瑛子は、久我に性的虐待を受け続け、現在でも愛人としてその爛れた関係に苦しんでいるのだ。そんな生活の中で唯一、瑛子の心を癒すのは一枚の古ぼけた雑誌の切り抜き写真。それは、『アメリカの名も知らない山の写真』
その写真を瑛子に渡したのは、同じ施設で過ごした三歳年下の遠藤ミチヲ。孤児施設での瑛子の生活もまた地獄だった。