覗く女 隣室のあえぎ

  • 2020/08/15
出演者:
早川瀬里奈
鮎川なお
クリス小澤
監督:
渡邊元嗣
上映期間:
2020/08/22 - 2020/08/28
上映時刻:
11:00~
シアター:
槙原淳子(早川瀬里奈)は、マンションの隣の部屋に住んでいるちょっとイケてる会社員・戸山夏夫(津田篤)に夢中で、毎朝出勤前に夏夫が出すゴミを自分の部屋に持ち帰っている。そして、夏夫のゴミを検分しながら、彼の暮らしぶりをチェックしている。要するにストーカである。淳子は、自分のことを知られないようにこっそりと、夏夫の部屋の前に料理を置いたりしていた。

ある日、夏夫の部屋に合コンで知り合った長山麻美(クリス小澤)がやって来る。二人は部屋で宜しくやっているが、それを淳子は聞き耳立てている。帰り際、夏夫の首に手編みのマフラーをかけてやる麻美。その様子を見ていた淳子は、二人の間を強引に横切る。呆気にとられる二人。麻美のことが気になる淳子は、数日後に社員に化けて麻美の会社に潜入する。何と麻美は上司の矢部(横須賀正一)と不倫関係にあった。家庭にかまけてなかなか構ってくれない矢部の関心を引くために、麻美は夏夫を誘ったのだ。夏夫にプレゼントしたマフラーも、本当は矢部に渡すつもりで編んだものだった。
事情を知った淳子は、麻美を呼び出す。淳子はセーターの下にボールを仕込んで妊婦になりすまし、自分は夏夫の別居中の妻だと言い張る。夏夫と別れるように詰め寄ると、麻美は慌てて別れることを約束。話もそこそこに、その場を逃げ出す。
淳子がダスト・ボックスを覗くと、麻美から送られたマフラーが捨ててあった。そこで、淳子は新しいマフラーを夏夫の部屋の玄関に挟んでおく。翌朝、そのマフラーをして出勤する夏夫を見て淳子は驚喜するが、その後でダスト・ボックスを見ると、自分が送ったマフラーが捨ててあり、肩を落とす。

夏夫は、久しぶりの高校の同窓会に出席する。そこで、憧れの女性だった小沢由衣(鮎川なお)と再会。由衣は現在、売れっ子のキャバ嬢をしていた。同窓会から帰って以来、夏夫は由衣と撮ったツー・ショット写真ばかり見ている。そして、意を決して彼女に宛てたラブレターを書くものの、投函する勇気はない。結局、夏夫は手紙を丸めてダスト・ボックスに捨ててしまう。その手紙を拾って、夏夫の気持ちを知った淳子は、くしゃくしゃになった手紙をアイロンで伸ばして、由衣に送る。
由衣に呼び出された夏夫。彼女は素直にラブレターのことを喜ぶ。しかし、送った覚えのない夏夫は戸惑うばかりだ。そして、夏夫は誘われるまま由衣とベッドを共にする。事が済んだ後、由衣は初エッチの記念にブランド物のバッグがほしい、と夏夫にねだる。貧乏な夏夫は、プレゼントを買うためにサラ金から20万円も借金をしてしまう。
例によってダスト・ボックスを漁った淳子は、夏夫の借金を知る。そして、掃除婦に変装して、由衣の住んでいる高級マンションの前で待ち伏せする。出て来た由衣は、携帯で常連客に海外旅行をおねだりしている。夏夫のことを由衣が弄んでいたことを知って、淳子は怒る。彼女は、男装して由衣を呼び出す。夏夫はゲイで自分と付き合っているから別れてほしい、と淳子は切り出すが女であることを由衣にあっさり見破られてしまう。そりゃそうだ。
男装女子にアブノーマルな刺激を感じた由衣は、淳子をホテルに連れて行く。しかし、開き直った淳子に逆にやり込められてしまう。お互いに全裸でぐったりする淳子と由衣。由衣は夏夫に今後ちょっかいを出さないことを約束する。

由衣に振られてしまった夏夫は、高校時代のアルバムをじっくりと眺めている。すると、夏夫はあることに気が付く。慌てて自分の部屋を出る夏夫。
川面に立って、ボーっとしている淳子。夏夫のためを思って自分がやったことが結局仇になってしまい、淳子は一人落ち込んでいる。私は一体何をやっているんだろう。煙草を吸おうと箱を取り出すが、中は空っぽだ。すると、煙草が横から差し出される。夏夫だった。「同じ銘柄を吸ってるんだね」と夏夫。淳子は驚いて、声も出ない。
「食べ物を作ってくれたのも、ラブレターを出してくれたのも、みんな槙原さんだったんだね」と夏夫は言った。実は、淳子と夏夫は高校の同級生だった。地味で全く目立たなかった高校時代の淳子のあだ名は「空気さん」だった。ある日、図書館からの帰り、淳子は後ろから何度も「槇原さ~ん」と呼びかけられる。しかし、自分の名字を呼ばれ付けてない淳子は、全く自分のことだと気づかない。声をかけて来たのは夏夫だった。淳子が図書館に本を忘れたことに気づいて、追いかけて来てくれたのだ。自分の名前を知っていてくれたことに感激した淳子は、それ以来ずっと密かに夏夫に想いを寄せていたのだ。
夏夫が、淳子のことを思い出したのは、高校時代のアルバムで自分が写っている写真には、必ずどこかに淳子も写っていることに気付いたからだった。淳子の想いに気付いた夏夫は淳子を部屋に招く。そして淳子は長年の夏夫への想いを遂げる。回り道をした二人は、ようやく結ばれたのだった。翌朝、目を覚ました夏夫は、淳子の姿がないことに気付く。慌てて、隣の淳子の部屋に入ると、そこにも彼女の姿はなかった。そして、夏夫は壁に貼ってある物に気付く。自分がダスト・ボックスに捨てた領収書や紙切れが、そこには画鋲でとめてあった。そして、夏夫に宛てられた手紙が。
「私は、やはり太陽を遠くから眺めることにします。太陽にあまり近づくと焼けてしまうから」。
夏夫が自分の部屋に帰って、改めて同窓会の時の写真を見ると、夏夫と由衣が写っている写真の端に、小さく淳子の姿が写っていた。「出席してたんだ…」と、夏夫は呟く。

満足げな表情を浮かべて、キャリーバッグを引いた淳子が、朝の街を歩いて行く。