豊丸と影田は、豊丸がまだ小学生の頃からつきあっていた。「三歳の頃から三輪車に乗った時の振動で感じ始めたの。小学校一年の時、近所のおにいちゃんにちんちんを見せられた。言いようのない胸騒ぎを覚えた。二年生になってオナニーを覚えた。四年生になって酒屋のおじさんにフェラチオを教わった。五年生の夏、あたしは影田さんと出会った」いんらん豊丸の目覚めである。それから六年間、二人はSEXセックスの毎日を送った。ところが、豊丸が高校卒業を目前に控えたある日、彼女は旅に出る決心を固める。「影田さんのことは大好きよ。でも、あたしの体はもう、ひとりの男だけじゃ満足できなくなっているのい「でも俺は、俺はもうお前から離れることができない。お前のいない人生なんて考えられない…」「奥深い痒きがあたしの体をつき動かしてくるのよ。淫乱をまっとうする旅に出なさいって語りかけてくるのよ。そうすることがあたしの運命なのよ」「それでも、それでも俺は、お前のそばにいたいんだ…」こうして、二人の旅は始まった。
大股為五郎、今日の豊丸の相手である。事業に成功したものの妻に先立たれ、田舎で独り身
を持て余している初老の男。もっとも、根っからのスケベであることは言うまでもない。
「最近セックスに贅沢になりましてね、何か物足りなさを感じるんです。体の芯からジンジンくるようなセックスがしたい、そう思っているところに豊丸さんの噂を聞いたもので、もういてもたってもいられなくなりましてね」「御期待にそえますかどうか……」「いやいや、泣く子も黙る究極のインラン女豊丸さん。見ているだけでチンポ汁が出て来ましたよ」早速、人のセックスが始まった。まるで二匹の獣である。グヂュグヂュグヂョ、ジュビジュバジュバ「ああ、興奮する」「あ…そこそこそこがいい、べちょべちょになる」必死で舌を使う大股「おお、甘くてまろやか」 二階からもれてくる豊丸のあえぎ声を聞きながら、影田は独りで煙草をふかしている。小さく溜め息をつくと、グラスにウィスキーをつぎたした「ああっ、入った入った入った」「おお、しまるっしまるう」「突いて!突いて!もっと突いて!そこそこそこそこ」「ああ、ジンジン来る!」「すんごいすんごい!いぐいぐいぐ!そのうちあえぎ声が雄叫びに変わる。まさに豊丸。椅子にもたれて眠っている影田。灰皿は吸殻でいっぱい。ウイスキーのボトルは空になっていた…
都心へ向かう列車豊丸と影田が並んで腰掛けている。弁当を食べる豊丸をよそに、影田はぼんやりと窓外の風景を眺めている。脳裏に浮かぶのは豊丸と二人きりで過ごした日々のこと
今度の相手は二十代の夫婦・武男と百合子。豊丸の力で武男のインポを治して欲しいというのだ。「よろしくお願いします」ベッドの上で武男が豊丸に頭を下げる。いつもとは勝手が違うものの、豊丸はあいかわらずのパターンで武男を責めはじめた。なされるがままの武男。
ダイニングでは影田と百合子が話し合っている。「あのぉ、謝礼はどの程度で…」「ああ、ま、適当でいいですよ」と、その時である。ベッドルームから武男の叫び声が聞こえてきた。「おっおっおおお!うおおおっ!立った!チンポが立った!」同時に豊丸のあえぎ声も漏れてくる。思わず耳を押さえる百合子。「終わるまで、ちょっと外に出ましょうか」影田が百合子を連れ出した。
「主人にはずいぶんと泣かされたんです。セックスのことになると人が変わってしまって…もう浮気とか不倫とかいう次元の問題じゃないんです…病気なんです」「どうしてインポなんかに…?」「主人の節操のなさにいい加減頭に来て、浮気したんです。わざと主人にバレるように。そうしたら主人、ものすごく哀しい顔して泣き続けるんです。それ以来、全然ダメなんです…」影田、黙って話を聞いている。他人事とは思えないような表情で…「精気を失った主人を見ていると、あまりに哀れで…でも、これでまた元に戻ったとしたら…それがまた不安で」ベッドの上では武男と豊丸が激しく腰をぶつけ合っている。これが人間のセックスか?と思うほど。「おお、やっぱり人生はセックスじゃあ…」武男が歓喜の絶叫とともに果てた。
「お前無しの人生なんて考えられない。たとえ淫乱でも何んでも、お前と一緒にいたいんだ」影田の言葉は本心から出たものだ。だからこそ二人の旅は続いていたのだ。しかし…もちろん、愛とはそんな単純なものではない。影田だけでなく、豊丸の方でも二人の関係の不自然さには気づいていた。心と体、愛情と肉欲、言葉では表現しきれない矛盾。なまじ理性を持つばかりに、人間誰もがぶつかる壁に二人は直面していた。そんなある日、影田の他愛の無い言葉が豊丸の怒りに火をつけた。「私は根っからの淫乱よ。今さら何よ。バカにしないでよ…」「別に深い意味はないよ。悪かった」影田の言葉は、もう豊丸には届かなかった。「ああ、むしゃくしやするわ。ちょっと外であたしの大好きなセックスしてくるから」そのまま外に飛び出す豊丸。「ちょっと待ってくれ」後を追っても、豊丸の姿は無かった。
ひょっとすると、豊丸は影田以上に悩んでいたのかもしれない。影田の気持ちは十分に解かっている。豊丸の方でも彼に対する愛情はあった。無意識のうちに甘えてさえいた。しかし、それでも体の痒きは納まらない。生まれながらの淫乱の血には逆らえない…
豊丸は戻ってきた。男を連れて、彼女が選んだ相手はヒッチハイカーの黒人であった。影田、豊丸、黒人ボブ…奇妙な三人の旅が始まった。おんな豊丸…何処へイク?