私は、彼の好きだったうどんを作って、エルヴィスのバラードをかける。これが私なりの供養だ。彼との愛の日々が想い出される。風俗で、クスリと酒でボロボロになっていた私を助けてくれた俊二を、私は決して忘れない。
そんな私が喪に服していたある日、俊二の奥さんである滋子さんがウチへ乗り込んで来た。俊二の死んだ後で私の存在を知った奥さんのヒステリーは、それはスゴイものがあった。私のせいで夫が死んだとか、散々言いたいことだけ言うと、あんたには何もやらないから!と、彼が私のたったひとつ残していったエルヴィスのレコードを持って行ってしまった。 彼の初七日、私は風俗時代からの友人である美和と再び彼の供養をした。優しく慰めてくれる美和に、思わず我慢していた涙を見せてしまう私。そんな私を見て美和は一緒に風俗の店を始めようと提案してきた。
店は、出張専門のクラブだ。しかも喪服妻を売りにしたもの。マンションを借りて、新聞の三行広告に広告を出す。同時に女の子も募集しなければ。広告屋の洋輔さんと打ち合わせ。いろいろ相談に乗ってもらえて、たいへん勉強になる。
早速かかってくる客の対応に大わらわ。世間には、結構喪服フェチがいるのね。
喪服フェチの坊さんを相手に奮闘するわたし。未亡人に妄想を抱く男たちを相手に、持ち前の淫乱ぶりを発揮する美和。
そんなある日、新聞広告を見て、なんと滋子さんが面接にやって来たのだ。滋子さん、意地は張ってるんだけど、なんだか生活に因っていそうだったから。それに、オミズあがりの滋子さんをみすみす手放す手はないでしょ。
こうして女たちの小さなクラブは、それなりに商売の軌道に乗り始めた。滋子さんは、相変わらず意地を張って、私とはあまり口を利いてくれないけれど。でも、それなりに楽しい生活だ。
そんな私に男が出来た。それは、広告屋の洋輔さんだ。商売のいろんな相談をしているうちに愛が芽生えた。
そんな折、洋輔さんの広告会社が倒産してしまう。私は、うちで電話番すればいいじゃない、というのだけれど、彼としてはそれじゃ納得いかないんだろう。友人から会社を興さないかという相談を受けていた彼は、その為の資金を借りたいと、私に頭を下げてきたのである。勿論、私はお金を彼に貸した。
ところが、洋輔はとんでもない結婚詐欺師だったのである。私が仕事に出ている間に、美和と彼の情事を偶然発見した滋子さんのお陰で、彼らの計画が発覚。私は難を逃れることになるのだった。
計画がバレてしまったことで、彼らはどこかへ逃走してしまうが、私はその事件がきっかけで滋子さんとすっかり意気投合。すっからかんになってしまった私に、滋子さんはあまり美味しくないうどんを作って励ましてくれた。そして滋子さんは私にエルヴィスのレコードを返してくれた。今回の事件で女の友情を手に入れた私は、滋子さんと仲良くなり、商売を続けていくのでありました。
それから数日後、洋輔と逃亡した美和が帰って来た。彼女もまた、あの男に騙されていたのである。来るものは拒まず。私たちは、また商売続行中!