同じ頃、銀行員の野崎成一に辞令が下りていた。「ソウル支店長を命ず」前支店長の急な辞職。成一はその代理支店長として、2年間の勤務を命じられた。一応の栄転だ。
早速、(関係の冷えた)妻・紅子に連絡を取る。韓流スタアにハマっている紅子はきっと喜ぶ筈だし、これを機に夫婦の関係を改善するチャンスだ。ところが、紅子は「(郊外に買った)家のローンが終わったばかりだし、いくら韓流スタアにハマっているからと言って、暮らす気はさらさらない。ああ言うのは、遠くにあるからいいのであって、日常になったらつまらない。たった2年間なんだから、単身赴任でいいでしょう」とけんもほろろ。仕方なく、単身赴任することにした成一は、半年後の着任までの間、ハングルを学ぼうと、ハッスル外語スクールに申し込む。
ハングル教室。やって来たのは美姫だった。美しい容姿、親切な授業。成一は、たちまち美姫先生に恋をする。
うきうきした気分で帰宅した成一。しかし、紅子は留守だった。韓流スタアのファンである仲間の主婦との会合に出かけたらしい。
だが実は、紅子は若い愛人の和樹と浮気していたのだ。韓流スタアの会合は家をあける為の嘘で、韓流スタアなぞにハマってなどいなかった。和樹の激しいセックスにとろけそうになる紅子であった。
成一の毎日は楽しくなった。仕事を終えると、ハングル教室へ直行した。一度、美姫先生を食事に誘ってみようと思ったが、真面目な性格の彼は言い出せなかった。
そんなある日、成一が学校へ行くと、ドアの前に張り紙がしてあった。それは、突然の閉校を告げる内容のもので、どうやら経営者・亀山が金を持ち逃げしたらしい。既に高い学費を前払いしていた成一は愕然とする。いや、もう美姫に会えなくなることが彼を愕然とさせていた。すると、そこへ美姫が現れた。彼女もまた突然の閉校で途方に暮れていた。給料の未払い、アパートも亀山名義で借りている為、追い出されてしまうだろう。そこで、成一は美姫に助けの手を差し伸べた。
成一には、仕事が遅くなった時の為に借りている部屋があった。「よかったらここを使って下さい。家賃はいりません。その代わり、ハングルを教えて下さい」勿論、美姫は喜んで申し出を受けた。
こうして、美姫と成一の個人レッスンが始まった。仕事が終わると、美姫の部屋いる部屋に寄り、泊まって行くことも多くなった。紅子は、仕事が忙しいのだと思い込んで気にもしていない。
美姫と成一が、男女の関係になるのに、そう時間はかからなかった。「私、何もお礼が出来ないから……」そう言って、韓国料理でもてなし、体を開いた。韓国人特有の白く肌の細やかな肌に、成一は夢中になった。ふたりの体はよく合った。「こんなにも肌が合う人がいるなんて。それも、国境を越えて……」 ふたりは、運命を感じた。
それからと言うもの、成一は休みの日にも美姫と過ごすようになった。日中など、全裸で部屋の中を歩き回り、ハングルの勉強もした。
ある晩、成一が来ると、美姫が押入れから見つけたと言う浮世絵画集を見ていた。それは昔、成一が大学生の頃に勉強していた資料だった。浮世絵について説明する成一。更に、彼は日本に伝わる四十八手を教える。それを聞いて、興味を覚える美姫。「私、成一さんとこうやってつながりたい」ふたりは、日本の愛の奥儀・四十八手に挑戦する。様々な体位に、美姫は濡れた。深く愛し合った。
しかし、蜜月は長くは続かなかった。ある日、成一は街角で美姫が見知らぬ男(安斉公次)と何か話しているところを目撃してしまう。その夜、成一は何気なく昼間のことを尋ねてみると、果たして美姫は嘘をついた。
別の日。安斉と彼の女・金沢文代が愛し合っている。そこへ、美姫が訪ねて来た。実は、安斉は美姫の書類上の夫だった。借金で首が回らなくなった彼は、グリーンカードを欲しがっている外国人に戸籍を貸し偽装結婚していたのだ。そして、間もなくその審査があると言う。今日は、その打ち合わせだ。
打ち合わせを終えて出て来た美姫を、成一が呼び止めた。尋ねる成一に、美姫はポツリポツリと事情を話し始めた。全てを白状した美姫は、「もっと早くに成一さんと会えればよかった」と言って涙した。
それから数日後。美姫は、国籍取得の審査に落ちた。偽装がバレたのだ。強制送還。連絡を受けた成一は、虹子と別れて美姫と結婚しようと言うが、美姫が成一の部屋に戻ることはなかった……。
ひとり淋しく、部屋で美姫との想い出に浸っている成一。そこへ、虹子から電話がかかってくる。「うちに戻って来て……」どうやら、紅子は和樹に捨てられたらしい。「すぐに帰る」電話を切った成一。彼は、3ヵ月後に控えたソウル転勤で美姫との再会に想い(美姫と成一のセックス)を馳せながら、部屋を後にした。