「その夜は、優しい男の子に、ご褒美をあげた。私をいっぱい食べさせてあげた。まさか、狼に、肉の味を覚えさせたとは思はなかった…」
月曜日、身支度をする奈津子はお気に入りのピンヒールの靴が無いことに気がついた。「あれ?」と思いつつも、オフィイスに急ぐ。街の中で何者かの視線を感じる奈津子。遠くでヘルメットを被った男の姿が…。
一方、オフィスでは、恵美と香がすでに仕事をしている。小さな編集社で社員は四人。恵美がある雑誌を手に取り「あれ、この連載、奈津子さんの担当になったんですか?」と香に聞く。激怒する香。その連載は長年、香が担当してきた連載だったのだ。「どろぼう猫!人気が出てくると、いつも横取りするんだから…」そこに、奈津子がやってくる。激怒している香は罵声を浴びせて、オフィスを出て行った。「奈津子さん大丈夫ですか?」と恵美が声をかける。しかし奈津子は「あれは誤解なのよ」と言い落ち込む。そして「今日はなんか熱っぽいから先に帰るわね」と奈津子。そこに正樹がやって来る。「あれ、大丈夫?」と気遣うが奈津子は答える気力も無く出て行った。地下鉄の駅で定期を忘れたことに気がつきオフィスに戻る。と、そこで目にしたのは正樹と恵美の痴態だった。奈津子ショックのあまり、その場から逃げ出した。
夜、目が覚める奈津子。夢か現実か分からない。「体が熱くて死にそう…」と缶ビールを取りに冷蔵庫に向かう。するとバイクの音が…。そして目の前に「かわいそうな僕の奈津子」と書かれ一枚の紙が目に入った。
住宅街を一人歩く恵美。すると角から出てきたヘルメットを被った男にぶつかる。そしていきなりピンヒールで顔面を殴られる。何回も何回も…。そして、息荒く携帯のメールを打つヘルメットの男「奈津子、お前は、最高の女」
翌日、恵美のデスクの上に花瓶が置かれていた。正樹と香、奈津子は「いまに犯人、捕まるわ‥絶対捕まる」と涙ながらに話している。ふと奈津子がパソコンのメールをチェックするとそこには「奈津子、お前は最高の女」「バカな小娘に裁きを下してやった」「ぼくがお前を守る」といったメールが届いていた。顔を覆う奈津子。奈津子は正樹にその事を相談するも「お前の妄想に付き合ってられない」と断られた。
「おかしくなりそう…あんたとは一度やっただけだよ。ああ…どうしよう」
その日の午後、亡くなった恵美の代わりに原稿を作家の健治のところに取りに行く奈津子。しかし、そこでいきなり健治に無理やりレイプされてしまう。「なんで…こんな事が続くの…」
数日後、健治のマンションに香がやってくる。そして「私の仇をとってくれたんでしょ?あの女どうだった?どんな声だすの?」と裸で寝ている健治に近づいていくと、そこには血まみれの遺体が…。驚いて部屋を出ようとする香だったが、ヘルメットを被った男に殴られる。そして…。捨てられたような二人の遺体が部屋の中に転がっていた。
夜、正樹を部屋に呼ぶ奈津子。「おねがい、今日だけは一緒にいて」と正樹の体を求める。しかし正樹は「俺たち一度も付き合ったことが無いのに」と奈津子にはっきりと言う。呆然とする奈津子。そして正樹は「ひどい言い方だけど、もう愛想を振りまいても、仕方ないから」と言って立ち去った。奈津子の目が凶暴に光る。
自宅へと歩く正樹に、「正樹!」呼び止める声が…。そこにはヘルメットを被った奈津子の姿があった。そしていきなりピンヒールで殴りかかる。気を失った正樹に容赦なく殴り続けた。
街角をおぼつかない足取りで歩いている奈津子。ふと足を止め、路地の片隅で見上げる。そこにはミラーが立っていた。奈津子のヘルメットの姿が歪んで写っている。
「また、君がやったのね。でも、君が、一番、私を愛しているのかもね」奈津子は呟いた