乾一は、数年前から口述筆記に換えた。気むずかしく、根スケベの乾一の口述筆記が務まる者は少ない。最近は伊丹雅美に落ちついていた。
ヘアーヌード写真集を畳に広げながら、乾一が口述し、それを雅美がワープロに打ち込んでいく。乾一の評論の主旨は、女性器を隠すヘアの効用を讃えるもので、谷崎先生存命であれば、ヘアヌードを楽しんだろうと、勝手に推測している。
妻を亡くした乾一は、さやかという若い愛人もいたが、スケベ心はむしろ嫁の杉子と、口述筆記する雅美に向かっていた。
杉子は自分に向けられる乾一のヒヒジジイ的な視線に気づいていたが、夫の夢尾は父親に圧倒されていて、まるで頼りない。セクハラに近い乾一の行為を、一人で撃退しなければならなかった。
雅美もまた、乾一のなめ回すような視線に気づいていたが、むしろそれを楽しんでいる。いやらしいジジイではあるが、文壇では著名な文豪なのだ。
乾一は、さやかを相手に「ワカメ酒」などを試み、ヘアの存在価値に対する考察を進めるが、だんだん物足りなくなってくる。嫁の杉子のヘアは?雅美のヘアは?
乾一は杉子が入浴しているとき、覗こうとするがうまくいかない。そんなとき、雅美が超小型のビデオカメラを乾一に見せる。まるで杉子の裸体を覗こうとする乾一を見透かしたようだ。乾一はそれを使って、浴室や寝室を覗くことに成功する。杉子の美しいヘア。
乾一は、息子と嫁のセックスをカメラで覗きながら、身悶えする。直接手を出せないだけに、乾一にとって杉子は観音様のように崇拝する存在となっていく。
雅美は、乾一の自分や杉子に対する執着を、恋人の明夫に語って聞かせ、嫉妬心をあおってセックスの味付けにしていた。ところが、明夫が嫉妬のあまり、雅美のヘアを剃ってしまう。
以前から、日本文学のためにヘアを見せてほしいと、乾一に懇願されていた雅美は困惑してしまうが、しかしこのパイパン状態を見せたら、乾一がどんな反応を示すか、興味を持つ。
きれいに剃りあげた股間を、乾一に披露する雅美。ショックを受けた乾一は、杉子のヘアを剃りたいという欲望に取り付かれる。
一方、ビデオカメラを発見した杉子は、夢尾に訴えるが、彼は父親に抗議することができない。杉子は、乾一と対決するが、逆に今書いている評論のためにヘアを剃ってくれないかと懇願される。見せるのがいやだったら、ビデオカメラを通してでもかまわないという乾一。
最初は相手にしない杉子だが、夢尾に対する怒りから剃毛することを了解する。その瞬間から、不思議な興奮に襲われる杉子。貞淑な嫁であったはずの自分が、義父にヘアを剃って見せることを決心しただけで、肉体の中から性的な興奮が沸き起こってくるのは、どうしてだろう。
ついに、約束の日がきた。剃るところも見せてほしいと乾一の要望に、杉子は寝室で剃り始め、乾一はそれを自分の部屋のTVでモニターしながら凝視している。
しかし、思わぬ興奮に襲われた杉子は、途中から乾一に剃ってくれと、カメラ越しにささやく。杉子の部屋に飛び込んでくる乾一。ついにはセックスとなってしまう。
ヘアを剃ったことで、自分の人格が変わったように思う杉子。乾一と時々プレイしながら、夢尾の奥さんとしてやっていくことが何の不思議もないように思えてきた。