夜になり、そそくさと帰って行く金子と香奈。一人オフィスに残される百合子。ため息をつき書類を閉じる。
ビル街の物陰。太った男が若い女を立ちバックで突いている。喘ぎながら腰を振る男・砂塚。女は立ちん坊のレミ。歯を食いしばっておぞましさに耐えている。離れた場所でそれを見ているぽん引きの板倉達男。去った砂塚の方に向けツバを吐き捨てる板倉。
百合子がいつも通うバー。百合子が入って来る。「おひとりさま、カウンターへどうぞ」とマスターがにこやかに百合子を迎える。少し離れた席に座っている見慣れないエリートサラリーマン風の男・沢田聡。なんとなく沢田に惹かれる百合子。後方の座席でいちゃつく中年のサラリーマンとOLのカップル。なんと、金子と香奈だ。近くで酒を飲んでいたチンピラ風の男が不愉快そうに金子と香奈を睨みつける。板倉だ。「おめえら、うぜえんだよ」立ち上がり金子と香奈に酒を浴びせる板倉。怯える金子の胸ぐらをねじり上げる板倉、拳を振り上げ金子を殴ろうとする。その拳が止まる。板倉の腕を砂塚が掴んでいたのだ。沢田を見て薄笑いを浮かべる板倉。「ちぇっ、気に入らねえ」、沢田を押しのけ出口へ向かう板倉。「おひとりさま、お帰り!」と店の主人。店内から沢田に向け拍手が起こる。砂塚を憧れの目で見る百合子。
ラブホテル近くの裏道。男に金を返そうとする百合子。男はさらに金を要求しようとしていると勘違いして、一万円を百合子に渡そうとする。そこへやってくる板倉。逃げさる沼田。立ち尽くす百合子を捕まえる板倉。板倉は百合子をフリーの街娼と思い、問いつめる。百合子のハンドバッグを開け中を漁ると、社員証が出て来る。「いい会社に勤めてるんだな」と板倉。素人と分かると砂塚から渡された金を取り上げ、「素人の来るところじゃねぇ。物騒だから早く帰れ」という。足がすくんで動けない百合子。遠くに加納の姿が見える。チッと舌打ちをする板倉。「来るんだ!」、百合子の手を引き走り出す。
街の灯りが見える丘。怯えて肩をふるわす百合子。「何ふるえてんだよ」笑って百合子を見る板倉の目は意外に優しい。「お前は俺と出会って運がいい。ヤクザに捕まったらシャブ浸けにされるとこだ」「あなたは?」「ケチなぽん引きさ」「ヤクザじゃないの?」「女の生き血を吸って生きてるってことじゃ、あの連中とかわらないが」苦笑いする板倉。「助けてくれたの?」「別にお前のためじゃねぇ。俺はあの連中が気に食わないだけさ。女の扱いも知らないくせに、金、金って金ばかり取ろうとしやがる。それに…」「それに?」「お前は、俺の最初の女に似てる」「最初の女?」「立ちん坊をやらせてかせがせた。シャブで死んじまったがな」深いため息をつく板倉。「好きだったの?その人のこと」「馬鹿言え、ぽん引きが女に惚れるかよ。甘く見るな!」百合子を睨みつける板倉。「いいか、このあたりを二度とうろつくな!」去っていく板倉。その後ろ姿を見つめる百合子。
数日後、娼婦姿の百合子を見咎める板倉。板倉の表情が鬼の形相に変わる。百合子を捕まえ、とあるビルの裏手に連れていく。「そんなに娼婦になりたいか?」うつむく百合子。「それなら俺が、たっぷり仕込んでやる」「こいつ、喜んでやがるのか!」百合子の頬を平手打ちする板倉。「お前は、本当の娼婦の悲惨さをしらない。いまなら引き返せる」と百合子を諭す板倉。百合子は気持ちが混乱して、その言葉が耳に入らない。優しく肩に手をかける板倉を振り切り、逃げ出す百合子。
夜の公園、沢田と鉢合わせする百合子。娼婦の姿を恥じて逃げようとするが、強い力で引きとめられる。泣きじゃくる百合子。沢田は黙って百合子を抱きしめる。を、さんざん嬲る沢田。
部屋からもれる百合子の悲鳴。聞きつけたホテルの従業員が、ドア外の廊下にいる。慌てて携帯を手に取る従業員。
沢田が百合子の口にバイブレータを突っ込んで、ガムテープを巻いている。百合子の背中にナイフでSの文字を刻む沢田。そこへ駆けつける板倉と加納。格闘の末、沢田を半殺しにする。血まみれで逃げさる沢田。半裸で縛られた百合子がベッドに転がされている。「上玉が手に入ったな」と、百合子の尻を撫ぜ、板倉に笑って目配せする加納。加納は百合子にシャブを打とうとする。それを見ていた板倉、耐え切れず突然叫ぶ。「俺は、もういやだ!」。加納の手からシャブを奪おうとする板倉。「甘ったれるな!」板倉を殴りつける加納。「俺は、もういやなんだよう…」涙と血に濡れた板倉の顔。それを、身悶えて凝視する百合子。板倉が床に落ちていた沢田のナイフを手に取る。ナイフを振りかぶる板倉。驚く加納の顔面に、鮮血がほとばしった。